山内健司さんの『舌切り雀』(平田オリザ作)

 現在取材中の桜美林大学プルヌスホール/アウトリーチ活動。相模原市・町田市内を中心とした小学校、特別支援学校等に国内外で活躍する芸術家が出向き’授業’をおこないます。さらにこの場は、平成26年度文化庁「大学を活用した文化芸術推進事業」の一環として、ホール職員やアートマネジメントを学びたい人に向けた「アウトリーチ実習」としても展開されています。
 けれどもアウトリーチは、いわゆるカリキュラムに則った「授業」ではありません。ダンサー、音楽家、俳優、詩人それぞれの方法論や世界感を軸にして、個性的で魅力あふれ、時には冒険的な「時間」をつくります。大きく分けると、公演鑑賞型とワークショップ型になりますが、どちらの場合も芸術家が自己紹介代わりに演じるデモンストレーションで、子どもたちはあっという間に彼/彼女たちの世界に引き込まれます。プロの芸術家の鍛えられた身体や声、演奏や演技力といった非日常性、コトバを越えた説得力や存在感を、子どもたちは敏感に全身で感じ取っているようです。

 その中で以下にご紹介したいのが、桜美林大学講師であり俳優の山内健司さん独り芝居『舌切り雀』です。脚本は山内さんが所属する青年団の平田オリザさんによるオリジナル。すでにフランスの小学校を中心にヨーロッパ各地で150回以上も上演されています。2011年からは日本語版も始まり、国内での上演もどんどん増えていくことでしょう。そう願わずにはいられないほど魅力的で、ほんの少し怖い「不条理(人形)劇」です。鑑賞後にはフランスの学校事情等も紹介され、俳優と子どもたちの質疑応答は国際理解の場ともなるプログラムです。文化庁に文化交流使としてご本人が寄稿されています。こちら⇒

 いつも見慣れた教室(日常)が劇場(非日常)となる体験は忘れがたいものです。子どもたちにとっても先生にとっても、学校という場や時間や日々の関係性に風穴があいて清々しい風が送り込まれたと感じるのではないでしょうか。もちろん芸術家たちにとっても、劇場のソトの世界で演じることは自らの幅を広げ、また芸術の意味を問い直せる尊い時間だと思います。

 優れた芸術家を揃えたアウトリーチ活動も今年は残すところ3回となりました。取材終了後に考察レポートを掲載したいと思います。