空耳図書館「きのこの時間」@新宿御苑を開催しました。

 去る10月26日(土)に新宿御苑で第2回「きのこの時間」を開催しました。

案内人:小日山拓也(美術)、ササマユウコ(サウンドスケープ)
◎特設FBイベントページ

 

 台風が続いた10月でしたが、この日は雨の翌日の晴天という絶好の「きのこ日和」となり予定通りに開催できました。しかし実際に森の中を歩いてみると各所で大木が根こそぎ倒れ、立ち入り禁止区域も多く甚大な被害をもたらした台風の爪痕がまだ生々しく残っていました。都会とは言えやはり厳しい自然の中、それでも「秋のきのこ」たちは倒れてしまった大木とは対照的に、ひっそりと逞しく森のあちこちで生息していたことも印象的でした。

 空耳図書館「きのこの時間」は一般的なきのこ観察とは一味違って、「美術×音楽」の視点を取り入れた「芸術の時間」として開催しています。これはそもそもアメリカの現代音楽家J.ケージが「キノコに熱中することによって、音楽について多くを学ぶことができる」と記した著書『サイレンス』(柿沼敏江訳 水声社)の言葉(思想)を読み解く時間として企画したことによります。音楽とキノコの関係性とは何か、もっと広くきのこから考える「芸術」とは何か。ケージの真意とは何か。
 タイトルにある”きのこの時間”とは「きのこを探す時間」のみならず、「きのこが生きている時間」に想いを馳せ、都会の森を「みる・きく・歩く」哲学散歩やサウンドウォークの時間でもあるのです。ほんの数日、場合によっては数時間で森の中の「きのこの時間」はガラリと様変わりします。まさに一期一会の出会いに心を躍らせながら食事の時間も忘れるほど熱中してしまう、それでいて彼等は積極的に語りかけてくることはなく静かにそこに「在る」。きのことは「出会いたい」と願った人にだけに特別な時間を届けてくれる、まさに芸術の存在そのものだと思うのでした。また来年の夏・秋シーズンには是非開催したいと思います。夏と秋、2019年の「きのこの時間」にご参加頂いた皆様ありがとうございました。
引き続き、どうぞご注目ください(サ)

※写真(上)コラージュの中央下は小日山拓也特製きのこ標本&イラスト栞
 写真(下)イラスト:Takuya Kohiyama

【案内人紹介】

小日山拓也(美術)・・きのこ愛好家。少年時代に偶然アミガサダケの郡生を見つけて、きのこに魅せられる。以来、野山や水辺、都市などでさまざまな生物を追い続けている。フィールドで得たモノで楽器を自作し演奏も手掛ける。芝の家・音あそび実験室、北千住だじゃれ研究会メンバー。東京藝術大学油絵科卒。

ササマユウコ(音楽)・・サウンドスケープを「耳の哲学」に世界のウチとソトを思考実験する音楽家。もともと都会の森のキノコ散策が趣味だったが、J.ケージの『サイレンス』からあらためてキノコと音楽の関係性を再発見。音のない音楽を「空耳」と名付け執筆活動も。『渋谷の空耳』(建築ジャーナル『散歩』2019年6月号)など。路上観察学会分科会メンバー。芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト代表