コロナ時代の考察日記(カプカプ祭りオンライン参加の感想含む)

祭りを終えてラジオ担当のアサダワタルさんにインタビューを受けるカプカプーズ。(背後には新井さん&板坂さん)
祭りを終えてラジオ担当のアサダワタルさんにインタビューを受けるカプカプーズ。(背後には新井さん&板坂さん)

 2月末からの活動自粛要請・オフィス閉館等に伴い大幅に予定を変更して活動しているコネクトです。10月1日のオフィス再開に向け、現在オンライン活動を中心に準備を進めています。またこのたび代表ササマユウコ(音楽家)個人に文化庁の活動継続支援助成がつきましたので、今後の見通しが立ちました。3月からオンライン化された活動から『コロナ時代の「新しい音楽の様式」を思考実験』しています。特に注目しているのはZOOMを使った生演奏の「時間のズレ」や「音のゆがみ」。しかしなぜ音楽は「ズレ」てはいけないのか。シェーファーが述べた「こだま」の魔法を楽しむように、ライヒが書いたPHASEのように、アイヌのウポポのように「ズレ」を積極的に受け入れる発想の転換も求められます。むしろ自然界のサウンドスケープは基本的にズレている。時間や呼吸をぴったりと合わせる音楽行為の意味とは何なのか、あらためて考えてみたいと思います。
 一昨日は5年前より体奏家・新井英夫さんの身体ワークショップで音の風景を担当している横浜市の福祉作業所カプカプ祭りに参加しました。昨年の「空耳図書館のおんがくしつ」でお世話になった芝の家・音あそび実験室のコヒロコタロウ(三宅博子、小日山拓也、石橋鼓太郎)とともに「ユウコヒロコタロウ」としてオンラインでの参加です。カプカプとは3月からZOOMでワークショップ経験を重ねてきましたが、手探りだった初期段階からは考えられないような新しい時代の「祭り」が実現していきました。カプカプーズをはじめ、新井さん&板坂さん、ミロコマチコさん、アサダワタルさん、現地メンバーと団地の常連さんで作られた「内なる三つの場」をzoom三元中継で結び、5時間以上にわたるYoutubeライブ配信で日本中の方が視聴(参加)することが可能となりました。まさにウチとソトがつながれた一日。
 特に個人的に印象深かったのは、他の施設の車いすの利用者さんとオンラインでつながったカプカプーズが「似顔絵」を描くコーナーのやりとりでした。今までだったら「出会う」ことすらなかったかもしれない二人がつながった瞬間。初披露となったカプカプーズNさんの似顔絵の才能にも驚きました(その才能を見逃さないカプカプにも)。昨年までは想像もしなかった時間と空間。オフライン祭りが可能となっても、今回のようなライブ配信は継続されていくのではないでしょうか。

22年目の集合写真
22年目の集合写真

【追記・音の考察】ZOOMは「声が大きい」人にスポットライトが当たる仕組みです。現場が大人数で盛り上がると、音チームの音は画面上で見事にかき消されてしまうのですが(苦笑)、現場のスピーカーからは流れていたらしい。さらにYoutube配信画面には別ラインでSEのように音が流れていたようです(アーカイブだとわかりづらいですが、生配信を見ていた皆さん音を聞いていらっしゃいました)。演奏するメンバー間は画面と同時進行でスマホでやり取りをしながら、現場の様子に合わせて楽器(音)を分担したり、演奏方法を思考錯誤したりしていました。
 ライブ配信の視聴者には「現地に音楽隊がいないのにどこで音が鳴っているの?」と思われた方もいたようです。音は4か所からの中継でした。反対に熱気にあふれる現場ではZOOMからのスピーカー音はかき消されているだろうと想像し、後半の音チームは配信画面(特に現地アサダさんのギター)に音をつけるという意識に切り替わっていきました。コードの動きで時間がつかみやすくなったこともありますが、現地の熱気を体感する人が放つ「音のエネルギー」が伝わってきたとも言えます。音と音、人と人をつなぐのはあらかじめ決めたリズムや尺ではなく、やはり非言語のエネルギーなのかもしれない。一方、それが身体的に実感できないもどかしさも残る訳です。
 朝方、音チームが壁に投影された誰もいない会場にサウンドスケープをつけていると、通りがかった子供たちやカプカプーズが画面越しに話しかけてきました。団地の壁と「テレビ電話」のようにやりとりする未来的なコミュニケーションを、特に子どもたちはどのように受け止めたでしょうか。

  前述したオンラインで広がる世界の可能性と同時に、オンラインでは「同じ空気の震え」を共有する、つまり共振や共鳴することの難しさを感じました。何よりも「祭りの後」、みんなで夜風に吹かれながら外でしみじみとビールを飲み、余韻を名残り惜しむような時間がごっそり抜け落ちる(職員さんたちは毎年後片付けに追われているのですが・・)。音楽や祭りを「成り立たせるもの」に人の「気持ち」は欠かせない。2020年の「寂しさ」はこの先も忘れないでいたいと思いました。人類が長い歴史の中で疫病や災害を乗り越えながら何とか今日まで生き抜いてこれたのは、生命エネルギーを分かち合う「生きるための知恵」があったから。中でも「ハレの日/祭り」の発明は大きかったと思います。それはやがて不要不急の芸術活動につながっていくのです。♪♪♪

 コロナの時代に「祭り」を開催したカプカプの「覚悟」。3月の自粛下から重ねていたZOOM会議でも感じましたが、要するにカプカプは”いつも通り”なのです。「新しい生活様式」を取り入れた程度で揺らぐ表面的なものではない。それが「誰もが受け入れられる福祉の場」の在り方、20年の間に培った地域コミュニティの懐の深さなのだと思いました。
  台風による午後からの大雨予想も大きく外れ、無事に開催されたカプカプ祭り。予測不可能な時間を共に過ごす体験はもはや「祈り」でもありました。リアルな空間の密度は薄かったわけですが(画面ではそう見えませんが(笑)、時間の流れはいつもとは違うベクトルで何とも濃密な「コロナ時代の祭り」体験でした。(サ)


筆者紹介/ササマユウコ(音楽家・芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト代表)

80年代セゾン文化映画事業、出版、劇場の仕事と並行して2000年代にCD6作品を発表。2011年の東日本大震災を機にサウンドスケープ論を「耳の哲学」として世界のウチとソトを思考実験している。上智大学文学部教育学科卒(視聴覚教育、教育哲学)。弘前大学大学院今田匡彦研究室社会人研究生(2011~2013)。町田市教育委員会生涯学習部まちだ市民大学担当(2011~2014)。2014年相模原市立市民・大学交流センター内に思考実験の拠点としてコネクト設立。