2023年もよろしくお願いいたします。「音楽、サウンドスケープ、社会福祉」

 2014年~2024年のコネクト10年プロジェクト「つなぐ・ひらく・考える」もいよいよ大詰めとなりました。2020年以降の予期せぬコロナ時代を経験し、2023年の今は設立当初のマグマのような目的が一気に明確になった気がしています。

 ここからの2年間はカナダの作曲家R.M.シェーファーが半世紀前に自著『世界の調律』の中で提示した「音楽、サウンドスケープ、社会福祉」を最終テーマとし、今までのコネクト活動を集大成しながら、対話カフェ、レクチャー、ワークショップ、執筆、読書会等さまざまなかたちで「サウンドスケープとは何か」を皆様にお伝えしていきたいと思います。
 2011年の東日本大震災をきっかけに、それまでの作曲やコンサート活動から弘前大学今田匡彦研究室のサウンドスケープ実践研究に飛び込み、そして2014年にコネクトを公共施設内に設立したことで一気に社会とつながる機会が増えました。まさに「音楽、サウンドスケープ、社会福祉」とは、筆者自身の音楽人生そのものだと改めて感じています。

 2021年夏に亡くなったR.M.シェーファーが、生まれながらに視覚に重い障害を抱えていたことが判明してから、シェーファーがなぜ「社会福祉」を併記したのかが一気に理解できた気がしました。視力の問題から、夢だった画家から音楽へと人生の方向転換を余儀なくされた青春時代、そして視覚と聴覚をつないだ独自の世界観「サウンドスケープ」を発見し、シェーファーはカナダを代表する現代音楽家へと人生を進めていきます。以前、文化功労者となった奈良たんぽぽの家・播磨達夫さんにお会いした際に、「極私は普遍に通じる」という言葉を伺ったことがありますが、シェーファーも言葉を体現したような人生です。

 ひとりの作曲家が発見した「音楽の内にある知」を、もっと外の世界とつなぐこと。そこから社会全体がやわらかに変化していくこと。シェーファーが提示した「社会福祉」とは何かを皆さんと一緒に音の体験から考えていけたら幸いです。


執筆:ササマユウコ(芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト代表、サウンドスケープ実践研究、音楽家)