音のワークショップ@ひなた村(町田市)

町田市の青少年施設「ひなた村」で開催された町田市レクリエーション連盟主催「町レクのつどい」特別プログラムとして、コネクト代表のササマユウコが講師を務め、参加者の皆さんにサウンド・エデュケーション(音のワークショップ)を体験して頂きました。「ひなた村」の名前の通りお天気にも恵まれた、穏やかで気持ちの良いワークショップ日和でした。

レクチャーでは「そもそも、音のワークショップって何するの?」から始まり、耳の準備体操の時間、おしゃべりしないで森を歩くサウンドウォーク、音であそぶ時間などを1時間半にわたって体験して頂きました。特にサウンドウォーク終了後の「音のたからもの発表会」では、足音、鳥のさえずり、野球場の掛け声、車の音、風の音、犬の声、遊具の音、水の音などなど、皆さんそれぞれの「耳」が捉えた「ひなた村の音風景」を分かち合いながら、お互いの「耳(世界)」を知る時間となりました。ほんの少し意識を変えて耳をひらくことできこえてくる、見えてくる自分と他者の世界。そこには正解のない世界、共感や調和、多様性を知る時間も内包されています。

またこの日は、3月に空耳図書館で講師を務めていただく作曲家の橋本知久さん(相模原アトリエ・ラーノ主宰)が遊びに来てくれました。ワークショップの最後には彼の鍵盤ハーモニカの即興演奏と、ササマが持ってきた写真の音具を使って皆さんと自由に’セッション’。ソトの世界に耳をひらくと、身体の中から音が生まれてくる不思議。円座になって、音風景を紡ぐように音を出していると、指揮者や楽譜がなくても自然とオンガクが生まれるのです。

特に子ども対象のワークショップでは、いきなり「オト」を出すとたいがいは「音のカオス」になってしまいます。音を出す人の「耳」が「きき方」や「他者の存在」に気づいていなければ当たり前の結果とも言えます。逆に言えば、ウチとソトにひらかれた耳は他者ともつながり、自分と違う耳(世界)の存在、そして音風景とは何かに気づいています。その存在を知った時、自分が出す音の質やタイミングは自ずと変わってきます。それはいわゆる「空気を読む」ようなネガティブな変化ではなく、音風景を自分からデザインするという積極的な意識の芽生えです。「オンガク」は身体リズムや五感を通して世界とつながる「関係性」であることの気づきとも言えます。

「耳」を意識して、シンプルに「きく」こと。そこから始まる小さな気づきの連続が、いつしか世界へとつながっていく。そのダイナミズムこそが、サウンド・エデュケーションいちばんの魅力です。今回は少し専門的なお話になってしまいましたが、音のワークショップは音楽的な知識や経験が無くても、誰にでも参加できるプログラムです。提唱者のカナダの作曲家/M.シェーファーが「音楽教育は全的教育である」と考えたようにコミュニケーションや福祉の場などにも応用ができる多面体の教育テキストとも言えるのです。(ササマユウコ記)