相模原市在住で、神楽坂の矢来能楽堂を拠点に活躍する金春流シテ方(主役)の能楽師・柏崎真由子さん。4月16日に橋本公民館で開催されたワークショップに参加しました。
東京造形大在学中に伊藤キムさんの「階段から転がり落ちる」授業で身体表現に目覚め、能の道に入ったという異色の経歴の持ち主です。美大出身らしく能舞台の死生観や宗教観を視覚的にも興味深く解説して頂きました。鍛えられた謡や舞を身近に感じながら一緒に体験する時間は、自らの身体を通して能の表現に触れる貴重な機会でした。
1000年の時を生き抜いた芸術には、決して穏やかではない歴史の中で培われたしなやかな強さや普遍性、何よりユーモアがあります。大地や社会が不安定な時代にこそ先人たちの知恵の結晶である古典が教えてくれることは多い。「能はシュールなんですよ」と柏崎さん。確かに時空を超えた破壊力のあるストーリー展開や、旅から生まれたミニマルな舞台装置、ある意味で前衛的な音楽は、観るものの想像力を豊かに刺激し幽玄の世界へと誘います。若い人にこそぜひ体験してもらいたい古くて新しい舞台芸術だと思いました。内/外のサウンドスケープ哲学とも通じる舞台の世界観にも惹かれます。
(ササマユウコ記)