「ろう者のオンガク」の当事者研究「育成×手話×芸術」2021年度報告書が公開(2/2)

 社会福祉法人トット基金が文化庁より委託を受けた「2021年度国際芸術祭実施に向けてのろう者の芸術活動推進事業」の活動をまとめた「育成×手話×芸術プロジェクト報告書 2021」を公開しました。ここではササマユウコの研究テーマでもあるオンガクを主にご紹介しますが、演劇、オンガク、美術、映画分野の活動が報告されています。サイトよりPDFダウンロードできますので是非ご一読ください。


〇「ろう者のオンガク」の当事者研究

 2016年の『LISTEN リッスン』(牧原依里、雫境共同監督)公開から7年が経ちました。この間に、監督たちが中心となった「ろう者のオンガク」をめぐる当事者研究が深く進んでいます。今年は筆者も関わった対話やアーカイブ、そして聴者側の論考も公開されていくと思いますが、何よりもまず、音のない世界の内側から発信される「ろう者のオンガク」と響き合うことを大切にしたい。音楽とは何かを、真摯に問い続けなければならないと感じています。

 このコロナ禍2021年の記録が現時点での最新版だと思います。文字はろう者にとっては外国語に等しく、第一言語である日本手話の動画もついています。個人的には雫境さんがオンガクを考察した3D座標軸が興味深かった。空間も使う手話の思考がよくわかります。サウンドスケープの視点からみると、実は「美術」もとても興味深いです。
 福祉ではなく芸術から「ろう者」とは何かを問う。そこからオルタナティブな社会や福祉が生まれていく可能性も感じています。


筆者:ササマユウコ(音楽家、芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト)代表
東日本大震災を機に、R.M.シェーファーが提示した「音楽、サウンドスケープ、社会福祉」をテーマに実践研究を行っている。映画『LISTEN リッスン』の共同監督たちとは公開時のトークセッションから現在まで、「ろう者のオンガク」をめぐる対話や考察を続けている。