カテゴリ:2023



2023/12/27
 12月20日に、今年最後の「カプカプと新井一座に学ぶ 舞台芸術と福祉をつなぐファシリテーター養成講座」が実施されました。今回は受講者(B班の皆さん)が自らプランを練り、全体の構造柱となるような導入部、ルーティンワーク、クールダウン部のファシリテーションに挑戦して頂きました。カプカプーズとの関係性も回を重ねるごとに柔らかな雰囲気となり、始終笑いの絶えない時間となりました。新井一座が担当したメイン部分では、クリスマスから年明けの行事をリアルに駆け抜けるような季節感や時間の流れを意識した内容となりました。LEDキャンドルや影絵をつかって美しい「光と影」の世界を楽しみ、最後にはみんなで声を合わせながら「人間除夜の鐘」がつかれていきました。ALSを罹患している新井さんの身体は徐々に自由が利かなくなってはいますが、だからこそアーティストならではの想像力の可能性が最大限に発揮されていきます。この場は「講座」の形式をとってはいますが、この1年間、新井さんの身体変化に合わせて柔らかく変わっていくチーム体制やカプカプとの関係性を知っていただくことが、もしかしたら受講されている皆さんにとって最も発見があることだろうと、あらためて感じています。次回は2月の開催になりますし、ここからまた新井さん&板坂さんのケアや生活スタイルの在り方も次の段階にシフトいくはずだと思っています。だからこそ、アートとケアがうまく響き合いながら、まだ誰も経験したことのないような新しい世界が生まれていくだろうと希望も感じています。引き続き、ご注目ください。 「カプカプと新井一座に学ぶ 舞台芸術と福祉をつなぐファシリテーター養成講座」 (主催:センターフィールドカンパニー/神奈川県マグカル事業) 新井一座:新井英夫、板坂記代子、ササマユウコ、小日山拓也
2023/12/07
 2009年に京都府舞鶴市の特別養護老人ホーム「グレイスヴィルまいづる」のワークショップから生まれた、ダンサー砂連尾理さんを中心とした『とつとつダンス』。コロナ禍に苦肉の策で始めたオンライン活動が思いのほか広がり、今では鹿児島のみならず海を越え、マレーシアやシンガポールへと、静かな波紋のようにじわじわとダンスの輪が生まれています。3日に北千住・東京芸術センターで開催された2023年度活動報告会〈展示・パフォーマンス・トークセッション〉では、冒頭でシンガポールの認知症家族とつながったミラーリング(真似っこ)や、失語症の方のための〈インチキ語の会話〉などで場や関係性をほぐしていくオンライン・ワークショップの様子も〈公開〉されました。  砂連尾さんの身体ワークは2012年に訪れた『たんぽぽの家』で頂いた「ケアする人のケア」の資料で注目しましたが、その後2017年に京都で開催されたアートミーツケア学会で実際にワークショップを受け、その後も直接お話を伺う機会がありました。「高齢者相手のワークショップは次が無いかもしれない」、一期一会であるという感覚を大切にされていることが、筆者がコロナ前まで10年続けたホスピスコンサートで得た感覚とも重なり共感がありました。  現在の砂連尾さんは、カプカプ新井一座でご一緒しているALS車椅子利用者となった体奏家・新井英夫さん、その新井さんともプロジェクトを展開している今夏サントリーホールのサマフェスで唯一無二の場をつくっていたジャワ舞踊・佐久間新さんとも緩やかにつながる『ケアの身体の星座』のひとりだと認識しています。 ●今回の活動報告会の詳細につきましては、主催一般社団法人torindoのサイトをご覧ください。この活動報告会ではアーティストを支える国内外の堅牢なプロデュース体制も大変印象的でした。以下は、個人的な感想から。
2023/11/27
オブジェクトシアターを掲げるラオスの劇団カオニャオと、人形劇をメインとする日本のデフ・パペットシアターが、昨今は福祉×ダンスのワークショップにも尽力する白神ももこを演出に迎え、次作につながる「ワークインプログレス」として成果発表を行いました(実施日:2023年11月26日 場所:神楽坂セッションハウス)。...
2023/11/25
 卒論の追い込み中の娘とともに、藝大美術館で26日まで開催中の「芸術未来研究場」展を覗いてみました。「芸術が未来に効く!東京藝術大学は未来の社会のことをいま、本気で考えています!」と謳われたパンフレットと共に、「芸術未来研究場」で進められている産学官連携プロジェクトが多角的な視座から展示されていました。個人的には「クリエイティブ・アーカイブ領域」に展示された「聞こえない音をきく」に目が留まりましたが、別会場に参考文献として『音さがしの本』が展示されていたので、やはり着想はサウンド・エデュケーションだと解ります。「センサリー」に着目したプロジェクトも興味深かったです。  「ケアとアート」の事例に関しては、まさに奈良のたんぽぽの家やアートミーツケア学会が長年提示してきた視座ともシンクロしています。正直言えば「後発」の印象ですが、「あの藝大」がケアを提示することに社会的な意義があるはずです。何よりも今の社会の空気、時代の変化を感じます。未来の芸術には社会とコミットする/逃避する、このアンビバレンスの調和が求められるのでしょう。  学長の日比野克彦さん、未来創造継承センター長の毛利さんは80年代のアートシーンを牽引していたセゾン文化にもつながりますが(私の就職先だった)、先日の下北沢で遭遇したマガジンハウスの福祉の展示に続いて、この展示もあの頃からの「未来」です。まさに2012年度小泉文夫賞を受賞しているシェーファーが70年代に提示した「音楽、サウンドスケープ、社会福祉」の道筋。 〇公式サイト https://www.geijyutsumiraikenkyujou2023.geidai.ac.jp/
2023/10/31
去る10月6日、第2回のカプカプ×新井一座「舞台芸術と福祉をつなぐファシリテーター養成講座」が実施されました。第1回講座の記録はこちらからご覧ください。また今月25日に、東京芸術劇場社会共生セミナーにて、同じくカプカプでラジオワークショップを展開しているアサダワタルさん進行のもと、カプカプ所長・演劇ライターの鈴木励滋さん、新井一座から新井英夫、板坂記代子、ササマユウコが登壇し、「オモシロイ表現が生まれる場の関係性」を提示したオンラインレクチャーと対話の時間を共有しました。こちらの記録も併せてご覧ください。  第2回目(B班)の10月6日は、1年の大きな節目となる9月のカプカプ祭りを終えた最初のワークショップということで、例年通り”クールダウン”の時間を目指しました。カプカプーズが馴染んでいるルーティンワーク、時間の流れやテンポを崩さずに、しかし後半では「舞台芸術」の基本とも言える大きな布をつかったワークを実施しました。みんなで広げた白い不織布を全身を柔らかく使って波立たせながら、その上で転がる小さな鈴の音に耳をすます時間が生まれました。またさらに大きなパッチワーク布を使っての、演劇的なアプローチも生まれていきました。かつて来日したイギリスの劇団テアトル・ド・コンプリシテの演出家サイモン・マクバーニーが「舞台芸術は椅子と布があれば十分に成立する」と話していたことを思い出します。それは「あそび」の基本とも言える。福祉の場だからといって芸術性を薄めるような「配慮」をするのではなく、アーティストの手元にあるアイデアや想像力を存分に分かち合う場として、カプカプーズの想像力やアイデアに心をひらく柔らかな心と体が求められる時間でした。
2023/10/26
 昨夜こちらのセミナーが無事に終了しました。アサダワタルさんからの「集合!」のもと、カプカプ所長で演劇ライターの鈴木励滋さん、体奏家・新井英夫さん、彼のALS確定診断後に有機的に変容するカプカプ新井一座から板坂記代子さん、そしてササマユウコが参加しました。昨年からはコミュニティ・アーティストの小日山拓也さんも一座に参加し(動画出演)、何よりもカプカプの鈴木まほさん、千葉薫さんをはじめ、実は関わる「みんな」が一座なのだとあらためて感じるひと時でもありました。  今回は、気心知れた仲間が内と外の「境界」であるオンライン上に集い、自分たちがやってきたことを俯瞰する時間でもありました。舞台芸術と福祉が出会う場は、太古の洞窟から続く人間の営みと地続きにあって、同時に「今」の延長線上にある「未来」の芸術や福祉のかたちでもあるだろうと。だからカプカプの日常と非日常を切り分ける「舞台芸術」ではなく、日常を少しずらした異日常のワークショップが求められている。それは「よく生きるとは何か」という根源的な問いにつながっていくし、励滋さんはそのカプカプの試みを「カクメイ」と呼びましたが、大袈裟ではなく本当にその覚悟をもって臨んでいるからこそ、それが今まさに病と向き合う新井さんへのエールともなっている。  もし時間制限が無かったら、あのまま朝まで語り明かせそうな(笑)密度の濃い時間でした。「何か面白いこと」が生まれる場や人の関係性が、少しでも次世代に伝わっていたらいいなあと思います(実は出演者間もひと回り以上の世代差があるし、まったく違う時代や国を生きてきたとも言えるので)。  後日、文字情報アーカイブも公開されると思いますので、どうぞ引き続きご注目ください。ご視聴ありがとうございました。 【音楽・サウンドスケープ・社会福祉から】  個人的に、この社会共生セミナーは2021年の第2回「もし世界中の人がろう者だったら どんな形のオンガクが生まれていた?」(牧原依里、雫境、ササマ)以来の登壇となりました。視覚障害者でもあったカナダの作曲家R.M.シェーファーが発見した知覚の境界に生まれる「サウンドスケープ」という世界。この「世界の捉え方」は音のある・ないに関わらず「場をきく力」になることを東日本大震災以来の活動のなかで実感しています。  シェーファーは、視覚を補うために聴覚を鍛えることで自らの世界を調律したはずです。しかし、特に幼い頃から聴覚訓練を受けてきた音楽家は、むしろ「聴覚以外」の知覚を「ひらく」意識の方が必要だと感じています。音に厳しすぎると見えなくなってしまう世界がある。「耳だけ」の音楽はむしろ不自然ではないか。「きく」の多様性、場によって知覚の「ひらき方」を変える経験を積むこと。「音楽・サウンドスケープ・社会福祉」を提示したシェーファーの真意は、むしろそこにあると感じています。 またそんなお話もどこかで出来たらと。 【東京芸術劇場専用サイト】 https://www.geigeki.jp/performance/event314/e314-2/
2023/09/18
 20年来の友人、荒木珠奈さん初の回顧展も後半に入りました。未見の方は是非おでかけください!実は我が家からも初期の小さな作品を出展しているのですが、この膨大な展示作品の中から、偶然それを写したダンサー新鋪美佳さんが「好きな作品」だと写真を送ってくれたのです。同じ世界に心惹かれる人の存在は嬉しいものですが、何よりこの偶然にはお互いびっくりしました。彼女が活動していたダンスユニットほうほう堂と珠奈さんには共通する世界観を感じていました。
2023/09/15
【境界に集う】...
2023/08/31
※この記事は〈音楽の生まれる場〉の関係性を「サウンドスケープ」と捉え直し、新しい音楽の聴き方、関わり方を提示しています。発見や気づきがあるたびに追記していくため初稿から変容していきますので何卒ご了承ください。時折覗いて頂けると嬉しいです。 最終更新日:9月18日
2023/07/22
開催日時:2023年7月17日(月・海の日)14時~17時頃まで 場所:北区北とぴあ展示ホール 表現 : 新井英夫・安藤榮作・板坂記代子 舞台監督 : 御園生貴栄 制作 : 三ツ木紀英 撮影 : 阪巻正志・八幡宏 編集 : 阪巻正志 ※以下、文中の敬称略は何卒ご了承ください。

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