3月23日、アートミーツケア学会の2023年度研究会が大阪大学COデザインセンターで対面・ハイブリッド開催され、コネクト代表で学会理事ササマユウコが話題提供者のひとりとして登壇しました。
研究者と実践者、アートとケアが響き合う「新しい知」を目指す学際的な場では、しばしば「ことば」の違いが課題になりますが、この研究会ではその「差異」で分断されるのではなく、境界を探るように響き合わせる場だったと感じています。後半はオンライン参加者も含めた会場内ではフラットな対話の場が生まれていきました。人と人が直接出会い、言葉を交わし合う時間の豊かさ、アートやケアについて考える人たちが生む場の空気感は清々しく、あらためてこの学会が持つオープンマインドを再発見する時間となりました。
今回、ササマは2011年の東日本大震災を機に始まった「自分を編み直すための、ことば探し」で辿った「音楽、サウンドスケープ、社会福祉」を示しながら、「現場のことば×研究のことば=アートのことば」として、コネクト活動のなかで出会ったカプカプ×新井一座や聾者のオンガク映画『LISTENリッスン』の《ことば》をご紹介しました。(写真は発表スライドから。2011年以前/以降の自分の世界の変化を対比した活動写真です)。
中村美亜さん(九州大学)の実践研究の方法論、そして田口奈緒さん(医療従事者)の現場に生まれるアートとトラウマのお話も非常に興味深い内容でした。
ちなみに今回の会場提供と対話進行を担当された学会共同代表ほんまなほさん(大阪大学)の専門には臨床哲学もあります。アートミーツケア学会の前会長・鷲田清一さんが提唱した臨床哲学は、1995年の阪神淡路大震災を機に生まれた「哲学をまちにひらくこころみ」です。
弘前大学でのサウンドスケープ研究のなかで、鷲田さんの『聴くことの力 臨床哲学試論』に出会い、両者の思想の親和性を感じてアートミーツケア学会に入会したのが2012年です。既に12年が経ちますが、実はコネクトの哲学カフェ(哲学対話)キックオフにご協力頂いた母校の上智大学・寺田俊郎先生も大阪大学院で臨床哲学を学ばれています。
2011年当時、「音楽をする私」の存在意義を見失い途方に暮れていた「私」が、自分を語りなおすための「ことば探し」の中で出会ったサウンドスケープや対話やケアの哲学が、鳴り響く森羅万象(Sonic Universe!)に気づかせてくれたと感じています。まさに「音楽、サウンドスケープ、社会福祉」の道筋。
〇アートミーツケア学会にご興味ある方は、学会サイトも是非ご覧ください。