10月31日、11月2日にオンライン(神戸大学)で開催された日本音楽即興学会に参加しました。
東日本大震災を機に、2011年から2013年までサウンドスケープ哲学研究でお世話になった弘前大学今田研究室からも発表。東京からの距離が遠くなってしまった弘前の動向を、神戸で伺うことができたのはコロナ禍の副産物とも言えます。
この学会は音楽学者・若尾裕先生をはじめ関西方面の研究者や音楽家が中心となって2008年に設立された非常にユニークな学会です。この学会の原点にある若尾先生はサウンドスケープを日本に紹介した『世界の調律』の訳者の一人で、M.シェーファーのインタビューを含む『モア・ザン・ミュージック』も出版されています。また音楽批評家としても非常に先鋭的かつ刺激的な視点をもち、音楽教育、音楽療法、実験音楽のクリエイティビティな面に光を当ててきました。現在は音楽家/研究者の寺内大輔さんが中心となって関西を拠点に運営されています。
2020年は二日間のオンライン開催でした。コロナ時代も半年以上が過ぎ、オンラインならではの刺激的な発表もみられました。特に関西の即興グループ「野営地」が試みたオンライン遠隔即興セッション、作曲AIを使ったデモンストレーション、小学校高学年向けプログラミング開発、弘前大付属支援級と普通級の合同音楽授業の事例、サウンドペインティング、バロック即興ワークショップ事例など、「即興」を切り口に世界をさまざまな角度から捉え、過去/現在そして未来を見つめていく時間でした。冒頭のシンポジウムには経済学者や医療従事者が参加、音楽をホリスティックに捉え直す即興的なトークセッションでした。
ちなみに日本には残念ながら「即興音楽」を総合的に学べる大学・大学院は存在しません。音楽とは何か、即興音楽とは何か?貴重な機会から得た示唆を糧に、今いちど言葉にして考えていきたいと思いました(サ)。
〇若尾先生のご紹介は2016年に体奏家・新井英夫さんと出演した座談会「生きることは即興なり、それはまるでヘタクソな音楽のように」(@下北沢B&B)でもご紹介しています。
執筆:ササマユウコ(音楽家・CONNECT/コネクト代表)
2000年代、洋の東西をつなげたCD6作品を発表。2011年の東日本大震災を機に、サウンドスケープを耳の哲学に社会のウチとソトを思考実験しています。上智大学卒、弘前大学今田匡彦研究室(2011~2014)。映画、出版、公共劇場等を経て、町田市教育委員会まちだ市民大学(2011~2014)運営担当。同年、芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト設立。