新年度のご挨拶

【ご挨拶】突如はじまったコロナ時代もあっという間に1年が過ぎてしまいました。この期間を振り返ると、誰もが先が見えない中での創造力や想像力、何より即興力が求められたと思います。それらの力は芸術の根幹にもつながり、だからこそ「新しいかたち」が求められているとも感じます。「今まで通り」を守るための創意工夫、「新しい方法や考え方」を試す実験精神。日々の暮らしの中でも、この両極端の判断が求められたのですから尚さらです。

 コロナは無かったことには出来ませんし、私たちは何とか知恵をしぼって生きていかなければなりません。過去の時間を紐解くと、同じような社会状況の中で作品を生み出してきた芸術家たちの姿も見えてきます。この春、空耳図書館コレクティブ映像でご紹介している宮沢賢治もまさにその一例です。芸術には人生の「光」だけでなく「闇」に向き合うことの大切さも教えてくれる。そこから自分とは何かを問うことは、大きな時代の変わり目にこそ考えたいテーマです。

 2020年度は長期間にわたりオフィスが閉館となり、皆様にも大変ご不便をおかけしました。2014年コネクト設立以来、素晴らしい仲間たちと有機的にプロジェクトを進めてきましたが、ふたたび個人に戻ったこの期間に、2000年代の仕事がきっかけで映像作品やオンライン活動への活路が開けるという「禍転じて」の展開もありました。さらに遡り2011年の東日本大震災・原発事故から始まった芸術を問う思考実験の日々が、10年を経て再び個人の原点に立ち返るような体験をしました。まさに私自身が、芸術とは何か、オンガクとは何かを考えることで生かされてきたのだと実感します。

 2021年度4月現在も世界は先行き不透明です。変異種ウィルスの脅威もワクチンの副作用も無視できません。しかし9月末にオフィスの更新期限を迎えることは決まっています。ここからの半年間でリアルに何が出来るかを模索しながら、10月以降のあらたな活動拠点・方法も検討に入りたいと思います。なお、代表ササマユウコ個人を中心とした活動は新しいかたちを発展させながら継続していきます。引き続き、ご注目ください。どうぞよろしくお願いいたします。(2021年4月6日)