【空耳図書館だより】
昨年の今頃は都内某所で撮影した「空耳図書館のはるやすみ」(助成:文化庁文化芸術活動の継続支援事業②ササマユウコの音楽活動)映像版の編集作業中でした。スペイン風邪、関東大震災の時代を生きた詩人・宮沢賢治が生前に1冊だけ出版した詩集『春と修羅』から冒頭であり”あとがき”でもあった「序」を空耳図書館コレクティブのメンバーと共にお届けしました。死後は童話作家として評価されていく賢治が、生前はダダイストとして詩集を出版している事実は興味深いです。賢治の死後に始まった戦争の中で「雨ニモ負ケズ」がどのように受け止められていったかを知ると皮肉なことですし、もし本人が生きていたら(作品が世に出た可能性は無いと思いますが)、芸術が戦争に利用されることは相当の苦しみになってしまったことでしょう。
自費出版の『春と修羅』はほとんど売れず、神田の古本屋街に横流しされていたようです。そして少し年下で同じ時代を生きた詩人・中原中也がこれを偶然見つけて買い集め、周囲に配っていたというエピソードが印象的です。どんなに時代が早くても、本物の芸術は誰かに届く力を持っているのですね。
奇しくも二人とも30代で胸を患い、最期はそれぞれの郷里である岩手と山口で亡くなりました。残念ながらこのふたりが出会うことはありませんでしたが、『春と修羅』の独特なオノマトペやリズムは中也の作品にも大きく影響を与えたと言われています。100年前はまだ誰も理解できなかった二人の言葉や感性はとても音楽に近く、ふたたび疫病と戦争の時代となった100年後の今にダイレクトにつながっている気がします。
という訳で、今年の「空耳図書館のはるやすみ」も映像版でお届けします。賢治の『春と修羅』から強く影響を受けたと言われる中原中也の有名な作品を空耳図書館コレクティブのメンバーと共にお届けします。春分の日に公開予定です。
また今週3月11日の東日本大震災の日には、「空耳図書館みくじ」第2弾を午前10時から3時まで1時間ごとに専用FBに投稿していきます。小さな言葉の力から何かが見つかりますように。
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2020年度文化庁文化芸術活動の継続支援事業(ササマユウコの音楽活動)
「空耳図書館のはるやすみ 春と修羅 序」メイキングより