3月30日はこちらの報告会に参加しました。
昨秋の東京芸術劇場のディスカッションでも焦点になりましたが、「ろう者のオンガク(仮)」はまだ手話がない=名前がついていない芸術とも言え、当事者たちの研究も進んでいます。今年度は聴者にとっても比較的新しい学問領域と言える「音楽人類学」の視点から、牧原依里さん、松崎丈先生、雫境さん3名が1年間の議論内容を詳細にまとめて報告されました。
映画『LISTEN リッスン』から抜粋されたシーンでは身体(筋肉)の緩急のリズム、そこから生まれるフレーズの繰り返しからオンガクを浮き彫りにし、VV(ヴィジュアル・ヴァーナキュラー)と呼ばれるろう者の視覚芸術や手話歌を比較対象として、その共通点や相違点から「ろう者のオンガク」のための実際的なスキルの訓練方法、そして最後には新しい名前(手話)が提案されました。
聴者にとっても大変興味深い内容で、この研究は特に「聴覚的音楽に手話を合わせる」ような従来の聴者主導のろう学校の音楽教育等に少なからず影響を与えていくのではないかと感じています。前世紀には当たり前だった聴者(マジョリティ)の感覚は、いま次世代のろう者たちの当事者研究によってアップデートされています。聴者には「ろう者のオンガク」を「きく」姿勢が求められる時代となったことを知らなくてはなりません。
引き続き、今後の展開にも注目していきます。
(ササマユウコ)
〇育成×手話×藝術プロジェクトのサイトはこちら。今回の報告書も掲載される予定です。