12月12日にコネクトネットの勉強会として、第二回路上観察学会分科会が開催されました。
今回は、関東大震災後の焼け野原観察から始まった今和次郎と吉田謙吉の「考現学(モデルノロヂオ)」の系譜をたどり、町田市内にお住いの吉田謙吉ご長女宅で、戦火を免れた路上観察スケッチ手帳や舞台美術デザイン画、戦後に出版された書籍等の資料を見せて頂くことができました。
吉田謙吉は築地小劇場から始まった日本の近代演劇史においても草分け的存在の舞台美術家でもあります。分科会代表の鈴木健介(青年団所属/舞台美術家)をはじめ、100年の時を越える貴重な資料を前にして参加者は胸躍るひとときを過ごしました。
関東大震災、第二次世界大戦とふたつの東京の焼け野原を体験した謙吉は、路上と舞台、つまり日常と非日常をつなげた視点で世界を捉えていたのだと思います。それは、東日本大震災を体験した私たちにとっても共感する芸術の在り方ではないでしょうか。非日常は日常の中にあり、生きることそのものが芸術だったからこそ、謙吉の自宅には小さな舞台も当たり前としてあったのでしょう。
ご長女・塩澤珠江さんは書籍『父・吉田謙吉と昭和モダン~築地小劇場から「愉快な家」まで』(草思社 2012)を出版されました。ご自宅の一部を蓮や民族音楽をテーマにした「ギャラリー季の風」として運営され(催しは不定期開催)、謙吉の洒脱で「モダン」な感性を大切に受け継ぎながら、同時にアジアの蓮や文化の魅力も伝えています。(文中敬称略)
町田の住宅地にあることを忘れてしまうような静かな森に囲まれた古民家のクラフト工房La Mano。ここは1992年に設立され、藍染や草木染、天然素材を使った染と織りのオリジナル製品を生み出しています。マフラーや靴下を始め、製品は色彩が非常に豊か。手仕事ならではの温かい風合いや手触りが全国でファンを増やし続けています。先日ご紹介した奈良・たんぽぽの家主催のGood Job!展でも京都・サルビアとのコラボ商品が紹介されていました。
離れのアトリエ(写真下)は、1階は機織り工房、2階は梁を生かした素敵なギャラリー空間に改装されています。ギャラリーでは尾崎文彦さんを始めとする人気作家の作品展示、カレンダーや缶バッチ等のオリジナル製品が販売されていて、作家ご本人が絵を描かれていることもあります。
現在取材中の桜美林大学プルヌスホール/アウトリーチ活動。相模原市・町田市内を中心とした小学校、特別支援学校等に国内外で活躍する芸術家が出向き’授業’をおこないます。さらにこの場は、平成26年度文化庁「大学を活用した文化芸術推進事業」の一環として、ホール職員やアートマネジメントを学びたい人に向けた「アウトリーチ実習」としても展開されています。
けれどもアウトリーチは、いわゆるカリキュラムに則った「授業」ではありません。ダンサー、音楽家、俳優、詩人それぞれの方法論や世界感を軸にして、個性的で魅力あふれ、時には冒険的な「時間」をつくります。大きく分けると、公演鑑賞型とワークショップ型になりますが、どちらの場合も芸術家が自己紹介代わりに演じるデモンストレーションで、子どもたちはあっという間に彼/彼女たちの世界に引き込まれます。プロの芸術家の鍛えられた身体や声、演奏や演技力といった非日常性、コトバを越えた説得力や存在感を、子どもたちは敏感に全身で感じ取っているようです。
その中で以下にご紹介したいのが、桜美林大学講師であり俳優の山内健司さん独り芝居『舌切り雀』です。脚本は山内さんが所属する青年団の平田オリザさんによるオリジナル。すでにフランスの小学校を中心にヨーロッパ各地で150回以上も上演されています。2011年からは日本語版も始まり、国内での上演もどんどん増えていくことでしょう。そう願わずにはいられないほど魅力的で、ほんの少し怖い「不条理(人形)劇」です。鑑賞後にはフランスの学校事情等も紹介され、俳優と子どもたちの質疑応答は国際理解の場ともなるプログラムです。文化庁に文化交流使としてご本人が寄稿されています。こちら⇒
いつも見慣れた教室(日常)が劇場(非日常)となる体験は忘れがたいものです。子どもたちにとっても先生にとっても、学校という場や時間や日々の関係性に風穴があいて清々しい風が送り込まれたと感じるのではないでしょうか。もちろん芸術家たちにとっても、劇場のソトの世界で演じることは自らの幅を広げ、また芸術の意味を問い直せる尊い時間だと思います。
優れた芸術家を揃えたアウトリーチ活動も今年は残すところ3回となりました。取材終了後に考察レポートを掲載したいと思います。
社会の変化や価値観の多様化により、私たちのライフスタイルは大きく変わりつつあります。そのなかで、誰もが誇りをもってはたらき、豊かになる社会のあり方が注目されています。そこでヒントになるのが、障害のある人やその周辺で生まれつつある魅力的なプロダクトやユニークな取り組みです。このGoodJob!展では「Good Life,Good Job!」をテーマにそれらの事例が紹介されます。アート、デザイン、ビジネス、福祉の分野を越えて、新たな出会いと仕事が生まれる場に足を運んでみませんか?主催は奈良で福祉とアートの先駆け的な関係性を展開し続ける「たんぽぽの家」。
東京開催 2014年11月28日(金)~11月30日(日)
渋谷ヒカリエ8F 8/COURT 11時~20時
主催:一般財団法人たんぽぽの家
専用サイト http://goodjobproject.com/