既に各メディアで情報公開が始まっていますが、2025年の東京では世界陸上とデフリンピック開催に伴い、3つのアートプロジェクト〈TOKYO FORWARD2025 文化プログラム〉が実施されます。
そのうちのひとつが〈ろう者とろう文化に対する社会的認知〉と〈ろう者と聴者が互いに共通理解を図ること〉を目的とした舞台作品『黙るな 動け
呼吸しろ』です。この舞台作品のテーマは〈ろう者にとってのオンガク、聴者にとっての音楽〉を探求し、言葉や文化が異なる両者が創作の場で遭遇する、日本手話と日本語によるオリジナルストーリーで上演される日本初の作品です。総合監修を東京藝術大学学長・日比野克彦さん、構成・演出を牧原依里さん、島地保武さん、ドラマトゥルクを雫境さん、長島確さんが務めます。
力強い印象のタイトルには、「通じないと思って黙ってしまう」「変わらないと思って動きを止めてしまう」ような空気の停滞を解きほぐそうとする日比野さんの想いが込められています。この舞台は芸術であると同時に、異なる言語や文化がもつ呼吸のリズムが集うとき《何が》生まれるのかを試みていく社会実験とも言えるでしょう。〈共通理解〉を得るためには、マジョリティである聴者の方が実は圧倒的に学ぶべきことが多いのですが、牧原さん曰く〈時間をかけて、ろう者・聴者との丁寧な話し合いの中で準備が進められている〉ということでした。両者の〈境界〉に生まれる新しい世界を楽しみにしています。
▶出演者オーディション情報は2月に詳細が発表されるとのこと。公式サイトやSNSでは関連イベント情報だけでなく、ろう者・聴者が互いに感じる気づきや発見など〈人間模様〉も追いながら、ワークインプログレスのように順次発信されていくそうです。ぜひ制作プロセスからフォローして、一緒に舞台を盛り上げていきましょう。
〇TOKYO FORWARD2025文化プログラム〈黙るな 動け 呼吸しろ〉
開催:2025年11月29日(土)東京文化会館 大ホール
公式サイト https://duk-tokyoforward2025.jp/
公式Youtube https://www.youtube.com/@duk-tokyoforward2025
インスタグラム @duk-tokyoforward2025
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、国立大学法人東京藝術大学
〇舞台をより楽しむための関連情報
・書籍『LISTENリッスンの彼方に』雫境編纂 論創社 2023出版
・無料配布〉育成×手話×芸術プロジェクト〈ろう者のオンガク〉チップシート
・2021年東京芸術劇場社会共生セミナー〈世界中のひとがろう者だったらどんな形のオンガクが生まれていた?〉登壇:牧原依里、雫境、ササマユウコ
抄録PDF https://www.geigeki.jp/wp-content/uploads/2024/04/20210918.pdf
・2021年現代音楽フェス・ボンクリ〈音のないオンガクの部屋〉鑑賞&考察レポート
執筆:ササマユウコ(音楽家・芸術教育デザイン室コネクト代表)
1964年東京生れ。2000年代までの作曲・演奏活動を経て、東日本大震災以降〈音楽、サウンドスケープ、社会福祉〉の実践研究。即興カフェ、聾CODA聴対話の時間、空耳図書館主宰など〈場の関係性〉から新しいオンガクのかたちを思考する。2023年度日本音楽即興学会奨励賞受賞、アートミーツケア学会理事など。日本音楽教育学会・査読論文あり。